ローズマリーの効能
ローズマリー(rosemary)は、地中海沿岸地方が原産のシソ科に属する常緑性の低木植物です。生葉もしくは乾燥葉を香辛料や、ハーブとして用います。花は食べることができ、水蒸気蒸留法で抽出した精油も、薬として利用されています。
成長すると高さ1.8メートルに達します。暑く乾燥した気候を好む一方で、寒さにも耐えられる植物です。厚く細長い葉を付け、こするとマツに似た香りがします。
冬から春にかけて青や紫がかった白い花が咲き、観賞用としても人気があります。
ドイツ政府によって設立されたE委員会が編集した、300種以上のハーブおよびその製品についての情報を掲載している「Eモノグラフ」にも収載されているハーブです。
ローズマリーは甘い芳香と爽やかなほろ苦さがあり、消臭効果や抗菌作用、高い抗酸化作用があります(1)。ヨーロッパでは古くから、その消臭効果や抗菌作用を利用し、クセの強い肉類や魚類の匂い消し、また、鶏肉や、白身魚、野菜など淡泊な素材の香りづけとしても利用されてきました。
強い香りを持つローズマリーは、カンファーという成分を含有し、カンファーは防虫剤の原料としても使われてきました。
ローズマリーは古代から薬用に用いられ、記憶力を高める効果があると言い伝えられていました。ローズマリーをアルコールと共に蒸留したローズマリー水は、薬用酒や香水として利用されていた歴史があります。
乾燥ローズマリーを95%エタノールで抽出したものには、高い抗ウイルス活性と、他のスパイスと比較しても際立って強い抗酸化活性が認められています(2)。
また、癌予防効果のある食材との研究発表もあります(3)。ローズマリーには、炎症抑制効果、血行改善効果など、多くの効能が報告されています。外用によるリューマチなどの関節炎や、内用では消化不良に対しても使用されています。
また、複数のハーブと組み合わせた使用で育毛効果があることが知られています。これは、5αリダクターゼ阻害作用(4)、血行促進作用、炎症抑制作用などに起因すると考えられます。
ローズマリーの主成分であるカルノシン酸には、神経細胞の維持に重要な役割を果たし、神経成長因子の生成を高める効果があることも報告されています(5)。軽度のアルツハイマー型痴呆症患者に対しては症状が改善する可能性のあるとの報告がされています(6)。
カルノシン酸と、カルノソールには、生体防御機構を活性化させる作用があり、解毒作用を高める(7)、また、ロスマリン酸には、花粉症の症状を和らげる作用があることが知られています(8)。
【ローズマリーの主要成分】
ウルソール酸 (ursolic acid)
オレアノール酸 (oleanolic acid)
カフェ酸 (caffeic acid)
カルノシン酸 (carnosic acid)
カルノソール (carnosol)
クロロゲン酸 (chlorogenic acid)
ゲンクワニン (genkwanin)
シネオール (cineol)
ピネン (pinene)
ベルベノン (verbenone)
ルテオリン (luteolin)
ロスマノール (rosmanol)
ロスマリン酸 (rosmarinic acid)
樟脳 (Camphor)
など。
【参考文献】
(1)食品に含まれる抗酸化物質のハイリノール型サフラワー油に対する酸化防止効果 駒沢女子大学 研究紀要 30 pp.31-38 19970303
https://ci.nii.ac.jp/naid/110004678400/
(2)斎藤浩、「香辛料の抗酸化性」『油化学』1977年 26巻 12号 p.754-764, doi:10.5650/jos1956.26.754
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/26/12/26_12_754/_article
(3)大澤俊彦、「がん予防と食品」『日本食生活学会誌』 2009年 20巻 1号 p.11-16, doi:10.2740/jisdh.20.11
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/20/1/20_1_11/_article/-char/ja/
(4)5αリダクターゼとは?5αリダクターゼ(酵素)は、人体に存在する酵素の一種で、男性型脱毛症(AGA)の原因物質でもあることがわかってます。
(5)Carnosic acid, a component of rosemary (Rosmarinus officinalis L.), promotes synthesis of nerve growth factor in T98G human glioblastoma cells. Biol Pharm Bull. 2003 Nov;26(11):1620-2.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14600414/
(6)アルツハイマー病患者に対するアロマセラピーの有用性 日本痴呆学会誌第19巻第1号
(7)Regulation of heme oxygenase-1 expression through the phosphatidylinositol 3-kinase/Akt pathway and the Nrf2 transcription factor in response to the antioxidant phytochemical carnosol. J Biol Chem. 2004 Mar 5;279(10):8919-29. Epub 2003 Dec 19
(8)斎藤浩、「香辛料の抗酸化性」『油化学』1977年 26巻 12号 p.754-764, doi:10.5650/jos1956.26.754